32話)




 シーツの中でのまどろみは、とても心地良かった。
 完璧に眠ってしまったらしい。
 共にベットの中で眠る歩の存在がとても温かく、ウトウトしていて・・・。
 ふいにベットの上が寂しいのでハッと起き上がると、いたと思っていた彼の姿がない。
(!)
 首をかしげて起きあがった瞬間、下腹部に鈍痛が走って、またうずくまってしまった。
 恐る恐る局部に手をやって・・・。
 そこが腫れ上がっていた。
 いつもと違う感触にあ然となるも、彼を受け入れたのだから、変わらないわけがないのだ。
 同時にあちこちの筋肉や、骨の節々を痛んでいた。
 シーツを捲りあげると、彼との行為の証拠まで目に入る。
 きっと歩は、仕事に戻ったのだろう。
「・・・すぐにも洗わなきゃ・・・。」
 呟いてノロノロ起き上がって、シーツをベットからはぎ取り、洗濯機にほおりこむ。
 すぐに回して、シャワーを浴びた。
 軽く拭いて、ベットルームに向かう。
 すぐさま服を着ながら、自然にさっきの彼との行為を思い出して、顔が赤くなってきた。
 歩く時、かすかにガニ股になっているのに気付いて、自分で自分を笑ってしまう。
 トイレに立って、用を足した時に、トイレットペーパーにかすかに血がついていたので、まだ出血があるらしい。
 パットをあてて、その時はしのいだ。
 トイレの便座に座って、ぼんやりしていると、ふいに彼が言った言葉を思い出して、ハッとなる。
『・・初めてで痛かっただろうけど・・だんだん馴れてきて気持ちよくなってくるはずだから。』
(・・・・・。)
「その言葉はおかしいわ。」
 つぶやくと、さらに現実味がアップした。
 真理は、結婚しているのである。
 夫ある身と知っていながら、“初めて”なんて言うコメントは、おかしいのだ。